有機を超えて (05/3/31)

1、有機認証制度とはそもそも何か?
2、自然の循環系 (有機の限界)
3、申請の実際  (H16年分の資料公開) 


1、認証制度とはそもそも何か?

戦後の科学技術の発達により農薬・化学肥料を使用した、又これに合わせて各種の農業機械が
制作され、現在も主流の慣行農業が発達してきました。
しかし、こうした発達は、環境汚染等の様々な問題を引き起こしてきたのも事実です。
こうした流れのなかでも、特に消費者団体との提携という形で、安全な農産物を提供すべく生産者
の方々は努力されてきました。
又、近年の健康志向の高まりと共に、安全を謳い文句とした有機・有機野菜・オーガニックといっ
た言葉が、店頭に巷あふれ出し、玉石混交的な状態になってしまいました。
そこで「流通の適正化を計る」ことを目的とした有機認証制度が導入され、平成12年6月に施行されました。

有機認証制度とは、生産又は製造の方法について(認定の対象には、生産工程管理者・製造業
者・小分け業者・輸入業者の四種類があります。)認定を受けた者だけが、製品に「有機」の表示を
することができます。このようにして、一般消費者向けに利点となる流通の仕組みが作られたわけです。

この法律の施行後は、有機・オーガニックの文字も勝手に使用する事はできなくなりましたから、
近くのスーパーでこれらの文字を目にする機会はグッと減ったと思います。
現在認定を受けているのは農産物全体の約0.2%程度とのことです。食糧自給率は三十数%ですか
ら、全食糧品に占める割合は0.07%程度。専門店でなければ目にする事はできない程の希少価値
のある数字です。

こうして一定の役割を果たしてきた有機認証制度ですが、いくつかの問題がないわけではありません。
そのなかで一番なのが、生産者への経費負担という点でしょう。
この有機JAS法とは、有機農産物の日本農林規格(平成12年1月20日農林水産省告示第59号)
というもので、国のお役所である農林水産省が定めたものです。
これは、あくまでも流通が混乱しないように、流通の便宜性の為に定められたものであって、この
ましい農業のあり方として有機農業を推進するという立場で法律化されたものではありません。
あくまでも一般消費者がスーパー等で商品を購入する場合の目安になるようにJASのシールを
貼りましょうという事で、消費者の利便性のみを考えて定められたものですから、実際に農業の
現場に身を置く生産者からすると、実に利用しにくい制度なのです。
農林水産省は国のお役所ですから、やはりお役所仕事です。
「お上はこのように定めました。これに従って、やりたい人は勝手にやりなさい。」という事です。

実際に認定を受けるにあたっては、取得費用が約8万円位かかります。(認定機関によって違いま
す)この8万円というのは、非常に微妙な金額で、けっして高額というわけではないのですが、私の
様な脱サラ組みの零細規模農家にとってはなかなか大きな数字です。
(例えば、1Kgあたりの価格を200円upしても400Kg販売してやっと元が取れるという数字ですから、
けっして安いという数字ではないのです。)
そしてこれは毎年かかります。例えば運転免許なども、私はゴールドですから5年に一度で済み
ますが、毎年更新が必要でかつ申請に8万円かかる、という事になると免許証を維持するかどう
か、相当数の人が悩む事と思います。

地方役場には必ず農業担当者がおり、農業改良普及所という期間も全国にあるのですから、
こうした機関を窓口にして、認定を取りたいと思う人は、誰でも安価に取れる仕組みになれば良い
と思うのですが、なかなかこうは行かないでしょう。
国としては、面倒な申請の審査・検査等は全て民間の認定業者にやらせ、この認定機関のみを
指導監督していた方が楽ですし、何か問題があったときにもそれは認定機関の問題であるとして
トカゲのシッポ切りをしていればそれで済むわけですし、責任を追求される事もありません。
そこまでの責任を取って国がやるという事は考え難い事です。
勿論利権の絡む公共事業等は、どんなに反対されても断固としてやるでしようが、この有機認証
とはそもそもどうでも良いような制度です。それなりにやっておけばそれで良い、という程度の
スタンスであろうと思います。

2、自然の循環系 (有機の限界)

ここまでは有機JASの制度的な面をみてきましたが、今度はその内容について少し考えてみましょう。
日本農林規格の(目的)として第一条にはこうあります。
第1条 この規格は、有機農産物の生産の方法についての基準等を定めることを目的とする。
      (有機農産物の生産の原則)

以下、その生産の基準について定められているわけですが、有機農産物としてシールを貼って販
売する為には、こうした生産の仕方をしなさいよというその生産の仕方を定めたルールだと言える
でしょう。しかし、これを定めたのは実際に農業をやった事がない農林省の偉いお役人さん達です。
少し解説したいと思うのですが、言っている事が良く解らないのです。
もっとも認定機関でさえ良く解らないと言っている位なのですから、私が解らないのも無理はありません。
一番の疑問点は、生産の方法のみならず保管・出荷に至るまで事細かく決められているのに生産
にあたっては農薬を使用しても良いという事になっている点です。
(第60号には、別表2としてデリス乳剤を始めとする30種類の許容農薬が定められています。)
この点は皆さんご存知のようで、「有機JASでは農薬を使っても良いことになっているので、皆必ず
使っているものとおもっていた。」と言われたこともありますし、これが為にJASよりも無農薬と表示
されている物の方が安心だと誤解を受ける元にもなっているようです。
(ただ単なる無農薬表示では、栽培期間中のみ無農薬というような荒業も含まれる事になりますか
ら、どういう内容の無農薬であるのかまでは特定できず、無農薬と表示されているだけで安心だと
するのは、あまりにも短絡な判断です。)
結局のところは、有機JASシールを貼っていたとしても、農薬の使用・不使用までは特定できない
わけで、更に農薬は使用していない旨の説明が必要であり、二重手間がかかる原因となっています。

これまでの有機栽培農家は、農薬・化学肥料の一切を使用しないという信念で栽培を続けられて
きたはずなのですが、農林水産省の考える有機農業とは、現場の農家が考える有機農業とは相
当の乖離があるようです。
もっとも農林水産省は、今まで慣行農業を推進してきた立場ですし、これからも更に合理化を進め
少数農家に集中して慣行農業による認定農家のみにしていこうとするのが国の方針ですから、
最初から無農薬栽培など認めていないのかもしれませんし、立場上、無農薬栽培を認容するかの
ごとき印象を与えかねない有機JAS法を定めるわけにはいかないのだ、というところかもしれません。
つまり、有機JASマークのついた有機農産物とは、あくまでも農林水産省の考えた生産基準に合っ
ているもの、という事であり、それ以上でも以下でもないということです。

しかし、一般諸費者が購入する場合の利便性という点を考慮すると、生産者ー仲買ー卸売りー
小売りと複雑な経路を取る流通機構を考えると、目で見てすぐそれとわかるシールを貼ってある
事は有効な方法であると思いますし、現段階ではこの方法がベストだという気もします。
お店のなかで事細かに栽培履歴を説明するわけにはいきませんし、いちいち聞いている暇もない
でしょう。 お店での購入という点を考えると、一目で見て解るJASシールが貼ってある方が便利だ
ということになると思います。
しかし、これはあくまでも一般の流通経路を取る場合です。
産直ネットサイトの場合は、すでにいつ・どこで・誰が・どのような方法で栽培された物であるのか
の情報は既に公開されているわけですし、疑問点があればいつでも照会することができます。
産直サイトの場合は、そもそも栽培情報を細かく公開するという内容で成り立っているものですか
ら、もうこれで十分であり、さらに認定機関に金を払ってシールまで貼る必要はないのではないか
と思います。 あればなお良し、という事になると思いますが、その為だけに毎年別途金を払う気に
はなりません。

もともと゛有機農業゛にこだわっているわけではありませんし、私が目指しているのは、もっと自然
の循環に注目した、生命そのものを信頼していく゛自然農法゛そのものです。
国が定めた有機の基準まで下げる必要はないし、いつまでもお付き合いする義理もありません。
今年度の更新の時期にあたり、どうしょうかと少し考えましたが、現時点では継続しなければならな
いような積極的な理由がみつからない為、今年(平成17年度)の認定申請は見合わせる事にしまし
た。 昨年はどういうものかと、一度申請してみたわけですし、もうこれで十分だという気もします。
やはりJASマークがあった方が良いということになれば、又認定を受けることになるかもしれません
が、私の有機認定制度とのお付き合いは、ここで一旦終了です。
今年からは、より高水準の自然農法に挑戦し、本当の自然の中で栽培されたナチュラル・シード
をお届けしたいと考えています。

3、申請の実際  ご参考までに、昨年平成16年度分の申請書を一部公開して置きましょう。

1、認定申請誓約書。 認定機関とかわす合意書です。
2、講習会終了証書。 協会が実施する有機農産物JAS講習会を必ず受けなければなりません。
3、有機農産物生産行程管理者認定申請書。
4、生産者、従業員リスト。資格要件〜責任者は認定の技術的基準が示す資格基準を有するこ
                        と。
5、履歴書。
6、公的地図。
7、全体図・周辺環境図。 全圃場、関連施設、堆肥置き場等の配置状況。および周辺土地の
                 利用状況について。
8、申請圃場リスト表。 
9、圃場図。 申請圃場一枚毎に必要。隣接する土地との緩衝地帯や距離、利用状況についても
         記入する。
10、圃場栽培履歴書。 各申請圃場について過去3年間の農作物の栽培履歴を記入します。
11、当期栽培計画書。 各申請圃場について、当期の農産物の栽培履歴を記入します。
12、各施設図見取り図。 各施設について、面積・構造・資材等の配置状況及びその施設におけ
                 る工程(輸送・選別・調整・貯蔵・包装等)を記入します。
13、施設リスト。 倉庫・作業場・育苗ハウスなど関連利用施設をすべて記入します。
14、機械・器具リスト。 所有・使用しているものを全て記入します。
15、有機資材リスト。  過去三年間に圃場で使用した、又は現在保有している有機JAS適合資材
               を記載します。JAS適合を確認した資料を添付する必要があります。
              販売店ではなく、製造メーカーに直接問い合わせて適合証明書を発行して
              もらわなければならない為、一番やっかいな作業です。   
16、非有機資材リスト。 過去三年間に圃場で使用した、又は現在保有している有機JASに適合
                しない資材を記載します。
17、有機種苗リスト。 過去三年間に使用した全ての有機種苗を記載します。
18、非有機種苗リスト。 非有機の場合はその理由を詳しく書く必要があります。
19、育苗方法。 育苗場所・方法・種子の処理法・培土の種類・灌水法について詳しく記載します。
20、格付実績記録。 格付け(シールの添付)した場合は記録にして置かなければなりません。
21、JASマーク管理記録。 不正使用を防ぐ為に記録に付けて置く事が求められます。
22、添付書類。 各農場ごとに独自の内部規定・格付規定を作成して添付書類として提出します。


内部規定
         (申請にあたって、私の農場はこのようにしますよという事を規定として定めたもの
         です。)

種苗に関する入手方針
1、作付けする作物は在来種を基本とし、自家採取種子を利用する。 F1種、遺伝子
  組み換え種子は使用しない。
2、作付けする作物は、雑穀・豆等が全て在来種の為、特別な採取方法は取らない。
  その年収穫したものの一部をそのまま来年用の種子として利用する。
3、新たに種子を入手する場合は、有機由来のものを選択するのを原則とする。
4、栽培用の苗は購入しない。
5、育苗用の育苗培土は、畑の土をそのまま使う。外部からは購入しない。
6、種子消毒は行わない。

資材に関する入手方針
1、外部から購入する場合は、使用資材名・入手先を明確にリストアップし、許可資材で
  あると証明できるもののみを使用する。
2、資材は、その年の春元肥として利用するもののみを春に購入する。長期保存はしな
  いので保管場所は設けないが、圃場内にブルーシートをかけて一時保管する。
  この場合周囲からのなんらかの汚染がないよう十分注意する。

肥培管理に関する方針
1、圃場において生産された農産物の残渣に由来するたい肥の施用を基本とする。
  完熟たい肥の作り方、管理の仕方については、いまだ勉強研究中であるが、早期に
  達成できるよう努力する。たい肥作りにあたっては、JAS規格に適合しない資材等を
  混入しないように確認しながら作業をおこなう。 
2、作り置きしてあるたい肥はないので、2004年度はたい肥の投入はできない。
3、マメ科作物を輪作体系に組み込むことによって効率的な窒素循環をはかる。
4、雑草対策として、手取り除草したものは、圃場外に持ち出さず、そのまま緑肥として
  畑に還元する。畝間は管理機を使用して緑肥としてそのまま畑にすき込む。
5、土地の状態をみながら2~3年に一度土壌診断をおこなう。栄養成分の不足により
  正常な生育ができないと予測される場合に限り購入資材を使用する。

病害虫・雑草防除に関する方針
1、圃場内は、畝間は小型管理機を使用、株間はホーを使っての手取り除草とする。
2、圃場周辺(電牧下部分)は、ある程度伸びてから刈払機を使用する。
3、2004年は、試験的にポリマルチを一部使用して、除草労力の軽減をはかる。
4、有害動物(鹿・熊)の防除として、圃場周囲に電気牧柵を使用する。
5、作付け品種の選定により、適地適作の作物を輪作する事によって、病害虫の防除
  方策とする。その他の方策は用いない。
6、非常時にあっては、そのまま諦め、あえて防除はおこなわない。

生産に使用する機械・器具
1、生産圃場は有機のみであり、慣行圃場はない。全て有機専用である。.
2、管理機の整備時、オイル交換・ガソリン補給の時は、圃場の外でおこなう。
3、機械・器具を保管しておく倉庫内で薬品を用いた防除や処理をしない。

輸送・選別・調整・洗浄・貯蔵等の作業
1、混合の恐れがないので特に規定は定めない。
2、調整用等資材は使用しない。
3、放射線照射はおこなわない。
4、作業場所・保管場所で薬剤に汚染されないように管理する。
  これらの場所で、殺虫剤や殺鼠剤、蚊取り線香等を使用しない。くんじょうもしない。

出荷
1、出荷前に格付けを実施する。
2、有機にならなかった生産物は、一般農産物として販売する。この場合は取り違えを
  防止するため、非有機のものにはその旨を記載したラべルを貼る。
3、農産物は米用紙袋にいれたものをダンボールに詰めたものを荷姿とし、宅急便を
  利用して出荷する。輸送時に薬品等の汚染がなきよう配送業者に注意を促す。

年間計画の作成と認定機関への通知
1、毎年生産計画を策定し、登録認定機関に通知する。時期は、認定機関の指示により
  決定する。

認定機関による確認、調査等業務の実施に関し必要な事項
1、認定機関が確認、調査等を実施する場合、業務がスムーズに行えるように受け入れ
  態勢を整えておく。
2、改善の措置を指摘された場合は、速やかに対処し、報告する。

その他
1、当規定は2004年4月20日より施行する。
2、年に一度、内部規定の適切な見直しを行う。
 
格付規定
          (JASシールを貼る場合の注意事項です。)

目的
1、本規定は、格付けを適切に実施するために定める。

生産工程の検査
1、生産者自身が格付け担当者の場合であるので、自らの生産方法や管理記録を
  再確認して、生産工程に問題がなかったかどうかを検査する。

格付けの実施手順
1、格付けするときには、栽培記録.を見直してJAS規格に適合しているかどうかの
  確認を行う。
2、格付け時には、その日に行った分につき記録帳に記入していく。

格付表示の確認
1、表示方法は、卸売り・一般小口の場合は送り状に貼り付ける。
  販売先の希望がある場合には、小袋に貼り付ける。麻については格付けはしない。
2、ロット番号や、登録認定機関の名義が記載されているかの確認を行う。

不適合品の確認の処置
1、不適合品があった場合は、格付け表示はおこなわず、混合を避けるために別に
  保管する。
2、最終的には、全作物について収量と、格付けしたもの・しないものの別に記録して
  残しておく。

有機JASマークの管理
1、印刷されたシールを他に不正使用することのないように、使用枚数をチェックし、
  在庫数を管理する。

格付実績の作成と認定機関への通知
1、毎年格付実績報告書を作成し、登録認定機関に通知する。
  通知時期については、登録認定機関の指示に従う。

格付規定の見直しと実施
1、格付規定は、年に一度見直しを行う。

その他
1、当規定は2004年4月20日より施行する。


このような申請を経て交付された認定書です。

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