栽培人の冬の生活
北海道では、雪の降り始まる11月から、冬が始まります。これがすっかり雪が融け土が見えてくる4月の始め頃まで続きます。 特に寒さが厳しいのは12月末から3月の始めまでであり、この間の私の生活はこんな感じになります。
まず、タイマースイッチで付いたストーブのやかんを持って台所へ行き、凍って回らなくなってしまった蛇口と元栓にお湯をかけて解凍します。 この期間は夜寝る前に必ず水道の水を出して元栓を締め、水落としをしないと朝にはパイプの中まで凍って水が出なくなるどころかパイプが破裂してしまいます。ですから夜必ず水は落としておくのですが、それでも蛇口は凍ってしまってそのままでは回りません。 次に、たらいにお湯を入れ、同じようにガンガラガンに凍ってしまった手拭(タオル)を浸して解凍し、顔を洗って一日がスタートします。
「ヘェーッ、それなら冷蔵庫はいらないね?」 と言われた事がありますが、とんでもない。
そのまま置いておくと全て凍って食べられなくなってしまいます。北海道では、食品を凍らせない為に冷蔵庫は必需品なのです。
北海道では、未だに府県の事を内地(ないち)と呼びます。海を隔ててかなり北に位置するわけですし、やはり北海道は未だに気候的には外地です。多少はましなシベリアと思った方が良いかもしれません。
北海道には、半年間が冬であるという気候的なハンデキャップがあるかもしれませんが、それが逆に物の保存とか味の良さという面では利点に働いているのではないかと思います。
保存に関しても、北海道における常温保存とは、秋の収穫後に冷蔵庫に入れ、やがて自然に冷凍庫となり、だんだん冷蔵庫に戻っていく、というようなかんじになります。
夏と呼べるのは7月の終り頃から8月一杯位まで、9月に入ると秋風が吹き始めますし、この間も25度をこえる夏日はほんの数日です。28度を超えると異常な暑さであり、30度をこえようものなら大ニュースになります。
こんな感じですから、今お送りしている殻付き雑穀も、普通に常温保存していたものですが、自然の冷蔵庫に入れて置いた物ですよ、という言い方もできるかもしれません。
また北海道の農産物は味が良いことで評判です。道産品で何か不味い物をご存知でしょうか?
これもまた、北海道の厳しい気候条件の賜物なのではないかと思います。
北海道は半年が冬ですから、残り半年に春・夏・秋が到来します。
作物栽培には、よく栄養成長・生殖成長というステージ分けの考え方があります。
栄養成長(作物が育っていくこと)をなるだけ控え生殖成長(花芽を分科し実をつけること)にいかにもっていくのか、という農業上の技術なのですが、これは暖かくてダラダラと生育する府県の話であって、北海道においてはこんなことを考えている暇はありません。
春雪解けたら一斉に準備を開始し、遅霜の恐れがなくなったら一斉に種を蒔き、雪の降り始める10月の末までには、収穫・乾燥・脱穀取り入れの全ての作業を終わらせなければなりません。
作物の生育期間は3〜4ヶ月間のみ。 半年間の農作業に集中しなければなりません。
すなわち、作物にも人間にもまったく迷いがありません。春にスタートしたら、秋の収穫めざして一直線です。ああだこうだと考えたり迷っている暇はありません。 豆やえごまには多収する為の摘心栽培という技術がありますが、府県ではできても、北海道ではできません。生育期間が限られている為北海道ではできない技術です。
また半年間は雪の下でゆっくり冬眠するわけですから、一年中何らかを作り回せる府県の畑とは消耗度が違うといえるかもしれません。北海道の味の良さには、こうした気候風土のなかで生産されたものだから、というふうに説明できる面もあるのではないかと思います。 |
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