殻付き雑穀の保存法について

お送りする殻付き雑穀(種子)の保存法について聞かれることがたびたびあります。
私は、あくまでも栽培人としての立場から、「紙袋に入れての冷暗所での常温保存」をお勧めして
います。 お送りする殻付き雑穀は、あくまでも生きている生命体であり、単なる鳥の餌という
商品ではありません。 あくまでも生きている生き物として扱って欲しいという気持ちからこのよう
にお勧めしているわけです。
命あるものは生き、命亡き物は腐る。 有機物は無機物へと分解され(腐敗)、それがまた栄養素
となって有機物に合成されていく、生成と腐敗、分解を繰り返しながらこうした循環系の中で私達
は暮らしています。
以下はあくまでも、私がお送りする命の種である殻付き雑穀に対する私の個人的な意見であり、
様々に存在する商品に通用する゛保存法゛についての解説ではありません。

冷凍と冷蔵について
普段私達は、食品を保存するのに冷蔵庫や冷凍庫を使用しています。物の腐敗を防ぐ為です。
考えてみますと、私たち人間が食糧として普段食べているものには命がありません。
魚・各種肉類等は既に死んでしまった生物の死骸ですし、たまご・加工食品・生鮮野菜等々、
置いておくとどんどん腐っていく物ばかりです。
 唯一生きている物を食べるとすると白魚の踊り食い位でしょうか。 煮炊きするまで行き続けて
いる物としては、種子である豆類と籾付き玄米位でしょうか。
これ以外の物は常温で置いておくとどんどん腐ってしまいます。
その腐敗のスピードを遅らせるために冷蔵庫で低温保存するわけですが、これとて長期にもつ
わけではなく、せいぜい一・ニ週間位でしょうか。更に長期に数ヶ月以上持たせようとすると冷凍
庫に入れてがっちり冷凍しなければなりません。 保存方法としてはこうした工夫をしなければ
なりません。
普段、こうして人間の食料は全て冷蔵保管するのが習慣になっている為、なんでも冷蔵・冷凍
すれば良いような感覚がありますが、これら文明の電気製品を使用するのは、あくまでも死物の
食料に対してです。 同じ食糧でも、大豆・小豆等の豆類は冷凍保存したりはしないと思います。
これらも生きた種ですから、そのままほおって置いても腐る物ではなく、よってそこまでする必要
はないからです。 生きていている物は腐らない、だから腐敗防止の為の機器である冷蔵・冷凍庫もまた使う必要はない、という事になります。
乾物であるこんぶ・わかめ等、缶詰め等も、特に冷蔵の必要はなく、ある程度注意しながら保管
して置くという程度で十分なものです。
物自体は腐らないにしても、保管が悪いと細菌等の発生の心配はあるかもしれません。
しかし、これとてももともと傷みの激しい物を購入してしまった場合などは、これをいくら冷蔵・冷
凍したとしても、その中で細菌類が死滅するという事はありません。こうした細菌類は寒さには
滅法強く、冷凍した位で死ぬものではありません。 煮沸して熱を加えるのが一番です。
心配な場合は、熱湯に入れて2〜3分、煮沸消毒するのが一番と思います。

履歴について
履歴と言って、最初に思い浮かべるのはやはり゛履歴書゛でしょう。会社の面接時の必需品です。
そこには、何時生まれて現住所はどこで、学歴はどうで職歴はどうで、家族構成はどうで待遇
希望はどうでという、あらゆる個人情報が詰まっています。
面接官は、履歴書を見ながら実際に対面し、書類だけではわからない、その人なりを分析して、
のち採用か不採用かの決定をするわけです。
履歴書を持たずに面接に出かける人はいないでしょうし、ただ来られても面接官も困ってしまうでしょう。 面接もせずに採用し、後になって「こんなはずではなかった」といってみても、そもそも
そんな風に採用してしまう会社の方に問題がある、という話でしょう。
工業製品の場合は、この履歴がはっきりしています。車を買ってみたが、それがどこのメーカー
の物なのかが解らない、等という事はありませんし、他の工業製品等についても、製造メーカー
は、はっきりしているのが普通です。
ところがおかしな事に、食糧の場合は゛履歴不透明゛という事が普通です。もっとも最近では、
機械にかざすとその栽培履歴がわかるシステムをスーパーなどが試験的にやり始めており、
好評であればだんだんこうした事が広まっていく事と思います。

例えば、皆さんは今までに安全な物を求めて色んなショップから、よかれと思われる物を購入
されて来た事と思います。
たとえば国産の無農薬シードとして売られていたとして、産地と栽培人までは解ったとしても、
その後その商品が何時入荷して、販売までどれ位の期間どのようにして保存されていたもの
であるのか、という事まではなかなか解らないことだと思います。
 製品は当然ビニール袋に入れられて密封状態で製品化されて販売店へと出荷されるわけですから、その後販売店においての保存状態と期間は決定的に重要なファクターになってくると思います。
きちんとした業務用の冷蔵庫で保管されていたのならまだしも、鳥の餌自体はとても安いもの
ですから、さすがにそこまでの保管はしないと思います。
一般倉庫で蒸れる中で、夏期間ビニール袋に密閉されたまま一ヶ月位ほおって置く。どうなるか
の説明はあえて必要ないのではないでしょうか?
私の場合も、発送の関係からビニール袋に入れての出荷になりますが、注文を受けてから袋に
詰めて即発送するわけですから、生きた種を生きたままの状態でお届けすることが出来ます。
この点は、店舗販売にはない、産直の利点だと思います。

具体的には
粟穂の場合は、粒こそ生きていますが茎の部分は死んでいるものですので、いくら乾燥している
からといっても、多少は気をつけて保管した方が良いでしょう。
秋にお送りする春までの半年分は、いくら府県が暑いといっても日本全国零下近い冬なのです
から、常温で紙袋かダンボールに入れて置くことで十分持つと思います。
問題は梅雨から夏にかけての湿気と暑さですが、湿気を防ぐ為にはスチール缶に入れて置く
のも良い方法です。 お菓子や煎餅や海苔の入っていた缶には、湿気取り剤も入っています
から、そのまま入れておけばよいのです。 
でも梅雨が過ぎても缶のままでは、暑さが中にこもるかもしれませんので一度新聞紙に広げて日光消毒して虫干しした後、ダンボールに移し変えれば良いのです。盛夏の時だけは冷蔵庫に入れた方が気分的に安心かもしれません。
しかし、基本的には、とんなに暑いといっても人間や鳥さんが生きていける環境である限り、
種子が死ぬという事はありません。生き物が生きていけないような厳しい環境であっても植物の
種子は生き抜いていけるのですから。 死なない以上は腐らない、よって特別な保管方法も不要
である、というのが私の基本的な考え方です。生命に対する信頼感がもっとあっても良いのでは
ないでしょうか。

要は同じ種子である大豆・小豆等の豆類と同じような感覚であれば大丈夫です。
あとは、その土地、気候風土、住環境に一番合った方法を選択されたら良いと思います。
冷蔵や冷凍をしてはいけないという事ではなく、そうしたいのならばそうしても何ら差し支えはないのです。
今お送りしているものは、北海道の-10度-20度という厳冬を乗り切ってきた種子たちですので、
寒さには滅法強いのです。 冷蔵や冷凍の寒さにも死なずなんなく乗り越えることができます。
冷蔵庫に十分な余裕のある方や、小鳥の為の専用の冷蔵庫をお持ちのような場合は、せっかく
あるわけですから、使った方が良いと思います。でも、そうしなければならないと思って購入しなけ
ればならないと思う必要まではないと思います。
冷蔵庫などは、確かに低温ではありますが、湿気の面ではどうでしょう?
庫内の環境もそれほど良い物でもないと思います。一般の食品と一緒に保管する場合は
中に腐敗菌が充満していると言っても良いでしょうし、だから消臭剤を使うわけですしね。

でも、私が言う常温保存と、皆さんが考える常温保存ではかなり開きがあるかもしれません
ので、ここで北海道の常温保存という事について少し説明しておきましょう。

栽培人の冬の生活
北海道では、雪の降り始まる11月から、冬が始まります。これがすっかり雪が融け土が見えてくる4月の始め頃まで続きます。 特に寒さが厳しいのは12月末から3月の始めまでであり、この間の私の生活はこんな感じになります。
まず、タイマースイッチで付いたストーブのやかんを持って台所へ行き、凍って回らなくなってしまった蛇口と元栓にお湯をかけて解凍します。 この期間は夜寝る前に必ず水道の水を出して元栓を締め、水落としをしないと朝にはパイプの中まで凍って水が出なくなるどころかパイプが破裂してしまいます。ですから夜必ず水は落としておくのですが、それでも蛇口は凍ってしまってそのままでは回りません。 次に、たらいにお湯を入れ、同じようにガンガラガンに凍ってしまった手拭(タオル)を浸して解凍し、顔を洗って一日がスタートします。
「ヘェーッ、それなら冷蔵庫はいらないね?」 と言われた事がありますが、とんでもない。
そのまま置いておくと全て凍って食べられなくなってしまいます。北海道では、食品を凍らせない為に冷蔵庫は必需品なのです。
北海道では、未だに府県の事を内地(ないち)と呼びます。海を隔ててかなり北に位置するわけですし、やはり北海道は未だに気候的には外地です。多少はましなシベリアと思った方が良いかもしれません。
北海道には、半年間が冬であるという気候的なハンデキャップがあるかもしれませんが、それが逆に物の保存とか味の良さという面では利点に働いているのではないかと思います。
保存に関しても、北海道における常温保存とは、秋の収穫後に冷蔵庫に入れ、やがて自然に冷凍庫となり、だんだん冷蔵庫に戻っていく、というようなかんじになります。
夏と呼べるのは7月の終り頃から8月一杯位まで、9月に入ると秋風が吹き始めますし、この間も25度をこえる夏日はほんの数日です。28度を超えると異常な暑さであり、30度をこえようものなら大ニュースになります。
こんな感じですから、今お送りしている殻付き雑穀も、普通に常温保存していたものですが、自然の冷蔵庫に入れて置いた物ですよ、という言い方もできるかもしれません。

また北海道の農産物は味が良いことで評判です。道産品で何か不味い物をご存知でしょうか?
これもまた、北海道の厳しい気候条件の賜物なのではないかと思います。
北海道は半年が冬ですから、残り半年に春・夏・秋が到来します。
作物栽培には、よく栄養成長・生殖成長というステージ分けの考え方があります。
栄養成長(作物が育っていくこと)をなるだけ控え生殖成長(花芽を分科し実をつけること)にいかにもっていくのか、という農業上の技術なのですが、これは暖かくてダラダラと生育する府県の話であって、北海道においてはこんなことを考えている暇はありません。
春雪解けたら一斉に準備を開始し、遅霜の恐れがなくなったら一斉に種を蒔き、雪の降り始める10月の末までには、収穫・乾燥・脱穀取り入れの全ての作業を終わらせなければなりません。
作物の生育期間は3〜4ヶ月間のみ。 半年間の農作業に集中しなければなりません。
すなわち、作物にも人間にもまったく迷いがありません。春にスタートしたら、秋の収穫めざして一直線です。ああだこうだと考えたり迷っている暇はありません。 豆やえごまには多収する為の摘心栽培という技術がありますが、府県ではできても、北海道ではできません。生育期間が限られている為北海道ではできない技術です。
また半年間は雪の下でゆっくり冬眠するわけですから、一年中何らかを作り回せる府県の畑とは消耗度が違うといえるかもしれません。北海道の味の良さには、こうした気候風土のなかで生産されたものだから、というふうに説明できる面もあるのではないかと思います。

カビ・腐れの原因
これらの原因には、保存方法・保存状態の他に、物そのものの品質の問題もあるかもしれま
せん。
普通にスーパーで買ってきた野菜は置いておくと腐ってくるが、有機野菜は腐らずにしぼんで
いく、皆さんはこんな話を聞いた事はありませんか?
これは、見た目はまったく同じでも、その内容が全く異なる物だからです。
人間でもそうでしょう? 人間には二種類しかいません。男と女です。
では男は皆同じでしょうか? 確かに見た目は男は全て男です。しかし、その内面性、内容となる
とこれはピンからキリまでです。女性だってそうでしょう。女だからといって一括りできるものでは
ありません。 あえて説明するまでもなく、大事なのはその中身であり、内容なのだという事です。

鳥が食べたり食べなかったりするのは、見た目は同じでも、その中身・内容が全く異なるからです。
本物の有機野菜は腐らずにしぼみます。 ましてや命を宿す種が、腐ったりそこからカビが生える事などあり得ないことなのです。ただし、保存状態が適切である事は大事な条件となりますが。
次には、作物の内容に注目し、゛無農薬栽培゛とはどういう事なのかをもう一度考えて見ましょう。
 
無農薬栽培とは?   (05/3/20 UP)

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